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第9章 香菜さんと私

「初めまして、佐藤 香菜です」

最初に会った印象はかっこいいだった。
長い髪をひとつに束ね、体にフィットするジーンズに紺の大きめのセーターを合わせている。

「は、初めまして、坂本麻希です」

イメージとは恐ろしいものだ。
私の中での香菜さんはふんわりとした可愛い感じの人だと思っていた。

天然っぽい、守ってあげたくなるような女の人。

でも実際に会うと男の人に媚びたり、しなだれかかったりするような人には見えない。

「ごめんね、二人の邪魔をするつもりはなかったんだけど」

「いえいえ！そんな気にしないで下さい！」

二人の……ってことは私と雅也さんのことは知ってるんだ。

私はちらりと雅也さんの方に視線を向けた。
会社のキッチンで楽しそうにコーヒーを淹れている姿が目に入る。

「落ち着いたらすぐにいなくなるからね？」

その声や態度は嘘とは思えなかった。
落ち着いたら……多分本当にいなくなるつもりなのだろう。