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*妄想社長に振り回されて*
第1章 妄想社長と甘いキス
うちの社長は妄想が激しい。
仕事の話は大丈夫なのにプライベートな問題になると途端に訳のわからない妄想に縛られる。

「坂本、今日のお昼はどうする?」

ぼさぼさの髪に無精髭。
整えれば絶対に格好いいはずなのだが、彼がそんな風にきちんとしているところを私は見たことがない。

「私、今日はお弁当ですけど」

「え!何で急に?俺とご飯食べに行くの嫌になったのか?」

……ほら始まった。

小さな輸入雑貨のお店を経営している社長と、秘書という肩書きだけもらった事務兼雑用係の私の二人だけの会社は、日々彼の妄想でいっぱいだ。

「違いますって!お給料日前…」

「俺のこと嫌いなのか?」

「だから…」

「それとも彼氏に他の男と飯を食いに行くなって言われたのか?」

……人の話を聞け!
この二年間どれだけこの人にそう心の中で突っ込んだことだろう。
多分1日100回は思ってるな。

「ってかいつの間に彼氏ができたんだ?俺は全然知らなかったぞ?一体どんな奴なんだ?そんな心の狭い男はやめた方がいい!」

これが冗談で言ってるならまだ救いがある。
けどこの人の場合本気でそう信じ込んでるからなぁ。
ホントよくここまで人生歩んでこれたよ。




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