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第10章 菜々姫～囚われた戦国の美妻

「うううっ・・・・・・・・」

うめきながら、男がばったりと菜々に向かって倒れた。

「きゃっ・・・・・」

男が白目を剥き、口から血を流していることを知り、菜々が悲鳴をあげた。

拘束の手が一斉に緩む。

菜々は素早く姿勢を立て直し、男たちの元から数歩逃れた。

「何者じゃ！」

残された四人が、腰から短刀や鎖状の武器を取り出し、周囲の闇を見つめる。

人の気配はない。

どこからか、犬の遠吠えが聞こえてくるだけである。

空は僅かに白みを帯び、夜明けが近いことを教えていた。

倒れた男は既に息絶えている。

その背中には、深々と脇差状の刀が突き刺さっていた。

「誰じゃ！」

「姿を見せい！」

男どもが、狼狽した様子で周囲に叫んだときだった。

シュッ！　　シュッ！

その空気を切り裂くような音は、菜々の耳にも届いた。

だが、何も見えない。

その直後だった。

「ううっ・・・・・・・」

「うおっ・・・・・・・」

周囲の男たちが、苦しげにうめき、そのまま地面に次々に倒れた。

ぴくぴくと痙攣した肉体は、やがて動かなくなった。

息絶えた死体のそばで、菜々は呆然と立ち尽くしている。