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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第10章 菜々姫~囚われた戦国の美妻
獣どもから逃れられた安堵と、言い知れぬ恐怖が菜々を包んでいる。

その姫の頭上から、声が届いた。

「奥方様、大事ありませぬか」

大木の上から飛び降りたのは、誰有ろう、甚八であった。

「甚八・・・・・、お前であったか・・・・・・・」

地面に平伏した甚八に、息の乱れはまるでなかった。

屈強な肉体が、まるで猫のように躍動したことに、菜々は目を見張った。

やはり、忍びとしての役割を担ってきた男だけはある。

菜々は、初めてこの男の真の姿を知ったような気がした。

顔をあげることなく、甚八は声を発した。

「拙者の失態をどうかお許しを。うかつにも奥方様を取り残したばかりに」

「何を言うか、わらわこそそなたに礼を言わねばならぬ・・・・」

「水を探しにここを離れた隙をこやつらに」

「この者どもは、いったい・・・・」

「界隈を荒らす盗賊どもの手下でございましょう」

「そのような輩がこの国にもおるというか」

「本来であれば、奥方様に触れることなど許されない下層の連中です」

甚八は終始、地面を見つめている。

「下層の連中、とな・・・・」

「さよう」

そのような獣たちに陵辱されようとした事実に、菜々は改めて恐怖を感じた。

「奥方様、服を整えくださいませ」

地を見つめたまま、甚八が低い声で促した。

「そうじゃな・・・・・・」

覚醒したように、菜々は少し慌てて乱れた服を整えた。

肌についた土を払い、髪を素早く整え、再び手拭いを被る。

「甚八・・・・・」

不安げに声を漏らす菜々に、甚八は顔を伏せたまま言った。

「奥方様、ご安堵くだされ」

「・・・・・」

「拙者、ここで起きたこと、何も見てはおりませぬ」

「そなた・・・・・」

「よって、殿に言うことも何もありませぬ」

「すまぬ・・・・・・」

一度として顔をあげないしもべに対し、菜々は頭を下げた。

「甚八、この恩は決して忘れはせぬ」

「それがしは役目を果たしたまで。奥方様、ここは少々あぶのうござる」

「甚八、わらわは大丈夫じゃ。先を急ごう」

「承知」

光を帯び始めた空の下、菜々は再び甚八の後を走り始めた。
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