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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第10章 菜々姫~囚われた戦国の美妻
板敷の広間の中央に、粗末な布団が敷かれた。

それを遠巻きに囲んで、盗賊集団が座っている。

一段高くなった場には、頭領格の老人が煙管を握って目を細めている。

囚われた藤川の武者たち数名は、縛られたまま土間に転がされていた。

だが、彼らの視線もまた、布団の付近に注がれている。

「奥方様・・・・・」

武者の一人が絞り出した声に、盗賊たちは気づいてはいない。

「火を弱めるのじゃ」

老人の言葉に手下たちが動く。

煌々と広間を照らしているかがり火のいくつかが消されていく。

昼のような明るさが、瞬く間に闇に吸い取られていく。

僅かな火が、暗い広間を妖しげに照らし出す。

「紐を解いてやれ」

甚八、そして菜々の体を縛り上げていた紐が解かれる。

肢体に自由が戻った二人は、しかし、表情を硬くしたままだ。

「始めるがよいぞ」

「・・・・・・」

「めおとであることを証明してみい」

それっきり、老人は口をつぐんだ。

周囲にいる手下どもも沈黙を貫いている。

甚八は動くことができなかった。

自分が仕える殿の妻を抱くことなど、できるわけがない。

城にいるときには、話を交わしたことさえなかった。

逃走中でさえも、甚八は菜々を直視することは控えてきた。

それほどに身分が違うのである。

ぼろい麻布の服をまとったまま、甚八は動こうとしなかった。

が、何かを決意したように、菜々がささやいた。

「参るぞ」

菜々が立ち上がる。

ゆっくりと布団に近づいていく。

なおも動こうとしない甚八に、前を向いたまま、菜々が言った。

「はよう」

甚八が重苦しい雰囲気をまとったまま立ち、布団に近づく。

覚悟を決めた様子で、菜々は自分から布団の上に仰向けになった。

その手が、甚八の腕をとった。

甚八の動きが止まる。

「できませぬ」

周囲にいる誰にも聞こえないほどの声で甚八はささやいた。

「わらわの素性を忘れるのじゃ」

「奥方様・・・・」

「そなたが想いをはせたおなごがここにおると思え」

「・・・・・」

「わらわを好きにせい」

菜々の瞳が潤んでいることに、甚八は気づく。

「殿に今一度会いたいのじゃ」

「奥方様・・・・」

「こよいはそなたの妻になる」

横になる菜々が、甚八を見つめた。

甚八の手に、初めて力が込められた。
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