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梨華との秘密
第7章 縄肌秘書
 俺の言葉に朱里の中に、ためらいと迷いが見えたが、彼女に選択させることにした。


「あの、どうしてもやらなきゃだめですか?」


 すがるような瞳で、俺を見つめてきた。


「あぁ、いやなら、この後はなしだよ。振ったのはお前だからね、朱里。残念だけどね。」


「そ、そんな、、でも、そうですよ、ね。」


 さあて、納得するかな?
 しかし、振られた理由がこいつなのは確かだしな。


「どうしたね。いやなら構わないよ。なかったことにすればいいんだからね。それに、俺が振られたのは、それが原因だろう?」


「えっ、どうして、それを?」


 朱里の驚きを面白く感じたが、


「ふふふ、お前は俺の奴隷だったんだよ。主が奴隷のことが分からなくて、主は務まらないよ。それに、もう一つの理由も知っているよ、朱里。」


 朱里の顔に驚きと疑問が表れ、信じられないという表情で、


「嘘でしょ、でも、そうですね。あなたは、私のご主人様だったんですものね。でも、もう一つの理由って、本当に分かってらっしゃるの?」


 ふ~ん、らっしゃるのって、えろ上から目線やな。


「ふふ、奴隷の子、つまり罪の子を作りたくなかったんだろう?SMはアブノーマルだからね。アブノーマルな子供は欲しくなかったってことだろう、朱里。」


 朱里の目が見開かれ、あぁと、ため息にも似た声がこぼれた。


「ご存知だったのですね。そこまで、あなたがご存知だったなんて、私、バカだったんですね。」


 彼女の瞳が潤み、透明な滴があふれた。


「ヤッパリそうだったんだね。あの時、お前は口も聞いてくれなかったし、俺も急に転勤になったから確かめようがなかったがね。」


「ごめんなさい、二郎さん。私があなたに相談すれば良かったのに、いまさらですよね。」


 朱里がワッと声を上げて泣きはじめた。
 俺の中に、今さらなにをって考えが頭を持ち上げたが、おくびにも出さずに、


「朱里、あの時、お前が来なくて最後のメールをくれた日に、俺は、お前にプロポーズしようとしてたんだ。結局あのメールとお前が来なくて、終わったんだけどね。」


 朱里の泣き声が一層大きくなった気がした。
 車はバイパスの笹沖交差点を、倉敷と反対の水島方面へ曲がった。 
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