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梨華との秘密
第10章 聖夜の宴
 しまったとは思ったが、罠にかかることに決めた。


「あの、送ってもらえますか?」


 うそだろ!
 引っ掛かるって決めたんだろ!


「いいよ。けど、ミキちゃんはどこなん?俺は倉敷やで。」


「はい、私も倉敷です。ごめんなさい、お父さんが倉敷に住んでるってわかって、私も倉敷に引越したんです。」


 参った、そう言うことか!


「倉敷?あっ、ええよ。ホンなら一緒に帰ろうか。」


「はい、お願いします。お父さん。」


 彼女の嬉しそうな笑顔と声に俺は、自分が完全に罠にかかったことを確信した。
 駐車場へ向かいながら俺は、彼女の話を聞いていた。


「お母さん、お父さんに会いたがってた。私が連絡しようとしたら、このままでいいんよ。そっとして置いてあげなさいって、お父さんにはお父さんの人生があるからって。そう言うて、私を止めたんです。アホですよね、お母さん。」


「いや、理恵さんらしいな。こんなエエ娘に育ててくれたんやもん。」


 俺は、それだけ言うと言葉がでてこなかった。
 不覚にも、感情が込み上げて何も言えなくなっていた。
 それを察してくれたのかミキも何も言わずに歩いていた。


「倉敷のどの辺かな?それによって、走る道がちがうからね。」


 車に乗ると同時に聞いていた。


「あっ、はい、中島口の辺なんです。便利が良いんで、わかりますか、お父さん?」


「わかるよ、ミキちゃん。連島だからね。これから来るかい?イブまで待つ必要はないから。」


「えっ、今からですか?けど、奥様とかには、ビックリするんじゃ?」


 ミキが驚いたように聞いてきた。


「今電話して確かめるよ。チョット待っててくれるかい?あっ、ミキちゃんの都合は大丈夫かな?」


 俺は自分の言ってることに驚きと、バカをやってるという意識が、頭の中でこんがらがり、無茶苦茶を言い出した自分の口を止められなかった。


「うそっ、ホンとにかまわないんですか?私なら、イブまで待てますよ。」


「いや、ミキちゃん。たぶん、今夜君を送って行くのが運命なら、そいつをたしかめたいんだ。だからさ。」


 そう言うと俺は、三奈の番号にかけていた。


「もしもし、三奈?俺だよ。実は今夜、会って欲しい娘がいるんだ。詳しい話しは、帰ってからするよ。だめかな?」


 大きく息を吸い込む音がした。
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