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梨華との秘密
第10章 聖夜の宴
 俺が頭を下げると、


「良いのよ、二郎さん。幸姉さんも言ってたわ。二郎さんは丁度良いところを知らない事があるから、いつもやりすぎで失敗するのよねって。だから、予想の範囲内かな?うふっ。」


 三奈の明るい笑顔が、俺を包んだ。


「ありがとう、三奈。彼女を送って行ったら、三人のクリスマスの始まりだ。」


「えぇ、そうね。早く帰って来てね。梨華も楽しみにしてるんだから。」


「そうだな。じゃあ、車の用意をしてくるわ。」


 そう言って、俺は駐車場へ向かい車で待っていた。
 十分ほどまつと、ミキが後ろのドアを開け車に乗ってきた。


「家の近所まで送るわ。中島の方に行けば良いんかな?」


 俺の中には、少女の頃のミキとさっきまでのミキとの落差にこんがらがっている自分がいるのに、驚いていた。


「ありがとう、お父さん。中島口の方向に行ってください。まだ、名前で呼んでくれるんですね。ごめんなさい。私、やっぱり恐いんです。だから、、。」


「ええよ、気にせんで、きょうはユックリ寝るんやで。」


 そう言いながら、車を走らせた。十五分ほどでミキのマンションについた。
 無言で車を降りると、彼女はペコリと頭を下げ、バックミラーで見えなくなるまで、そのままの姿勢でいた。
 俺は、これで終わりかなと思っていた。
 すぐに、自宅に車を向け、今夜の予定を変更しようか、そのまま行くか、迷っていた。
 しかし、どっちか決められないうちに自宅の駐車場に、車を止めていた。


「ただいま、送り届けたよ。ごめんな、三奈。二人っきりの時間だったのに、お前に辛い思いをさせたね。」


「お帰りなさい、二郎さん。ミキちゃんのことは、良いのよ。でも、そこまで言って下さるんなら、後で埋め合わせをしてくださいね。もうすぐ梨華も帰ってくるしぃ、冷たいものでも、飲みはる?」


 三奈の心遣いが、俺の胸を熱くした。


「あぁ、アイスコーヒーくれるかな?ありがとう三奈。一緒に飲まへんか?」


「うん、ほんなら、私もよばれるわ(一緒に飲むわ)。」


 そう言うと、アイスコーヒーを二つ俺の前に置き、素肌にエプロンの格好で隣に腰掛けた。


「ありがとう、三奈。ホンマはこうなって良かったんや。あの娘のためにはな。元の部下と奥さんにも許してもらえるやろ。お前には負担をかけたね、ありがとう。」
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