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梨華との秘密
第11章 双華繚乱
 唇が名残を惜しむようにユックリと離れ、三奈の微笑みが俺の心に染み込んだ。


「三奈、ユックリ休んでるんだ。片付けは梨華と一緒やるから、そこで見といてな。」


「うん、ありがとう、、休んでるわ。」


 疲れたような三奈の笑顔が、儚さを(はかなさ)を感じさせた。
 肩を軽く抱きしめ、ユックリと立ち上がり梨華の手伝いをしに台所に入った。


「パパ、ママは大丈夫だったの?」


 心配そうに聞く梨華の顔は、母親を心配する娘の顔だった。


「うん、大丈夫やと思う。きょうはママを少し追い込んでしもたけんな(追い込んでしまったからね)。ユックリさせてあげんといけんかもしれへん(ユックリさせてあげないといけないかもしれない)。」


 心配そうにいう俺の言葉に、


「パパ、ママを大事にしてあげてね。あたしにとっては、ママは一人しか居てへんのやから。」


 あらま、娘に注意されたよ。
 けどまあ、しゃあないか、梨華にとってはたった一人の母親やしな。
 俺は赤の他人やしな。


「うん、約束するよ。ママに冷たい飲み物を用意してあげないとね。梨華は、何かいるかい?」


「えっ、う~ん、アイスコーヒーかなぁ。ママも一緒で良いと思うけど?」


「アイスコーヒーね、わかった。ホンなら用意するわ。食器洗い機は良しやな。ほしたら、これ持って行ってきてなぁ。」


 お盆にロングタンブラーを三つと氷のジャグを載せた物を、梨華に渡した。


「えっ、アイスコーヒーじゃないん?」


「あぁ、美味しいアイスコーヒーのためさ。ふふ、まあ、あんまり変わらん、言う人もいるけどな。ママなら、知ってるよ。」


 ふうんと、返事をしながら梨華はリビングへ運んでいった。
 ヤカンにお湯を沸かしながら、麦茶とコーヒーの準備を始めた。
 リビングに入ると、三奈の側に梨華が座り、母親を労っているように見えた。


「お疲れさん、さあ、ママは麦茶かな?アイスコーヒーを用意しなきゃな。ふふふ、久しぶりやから、うまいことできるかな?まあ、待っててや。」


 麦茶の入ったコップを三奈の前に置き、コーヒーをドリップしてる間にタンブラーに氷を入れ、ドリップが終わるのを待っていた。
 三奈が麦茶のコップに手を伸ばし、ユックリと口に含んだ。


「あぁ、美味しい。ありがとう二郎さん。生き返ったわ。」
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