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梨華との秘密
第4章 娘との日々
「そうね、明日もお願いできるかしら?私もきょうと同じぐらいになりそうだから、お願いできると嬉しいんだけど?」


 明日もかぁ。
 参ったな。


「あぁ、いいよ。ママさえ良ければね。夕食も一緒だね?」


「えぇ、そうしてもらえれば助かるわ。でも、ほんとにいいん?」


 少し心配そうな表情が、俺に幸の面影を思い出させた。


「いいよ、ママ、大歓迎さ。明日はなんにするかな?簡単なモノしか出来ないけどね。」


「そうねぇ、シェフのお任せにしますわ。ウフッ。」


 イタズラっぽい笑いが、三奈の瞳に広がっていた。
 答えようと口を開きかけたが、


「私は、オムライスがいいな。大好きなの、ママのオムライス。だから、パパのも食べてみたいの。」


 梨華のイタズラっぽい笑顔が、俺達には太刀打ちできない若さで輝いていた。


「はいよ、お嬢様の仰せのままに。」


 うやうやしくお辞儀をして、おどけるように俺が頭を下げると、


「嬉しい、ママいいでしょ。」


 三奈の中に一瞬だが、哀しみの影が浮かんだ。
 すぐに消えたが、俺は見逃さなかった。


「いいわよ、梨華。パパのオムライスはママのお手本なの。」


「えっ、うそっ、そうなのパパ?」


 急に振られて、俺はパニクッた。


「そいつは、初めて聞いたね。ビックリや。」


「うふっ、そうね。パパのお母様の味なんですって、幸姉さんが教えてくれたの。」


 幸が?
 俺の中に軽いショックが襲った。


「うん、梨華にとっては伯母さんだけどね。パパが作り方を教えたんだ。明日、楽しみにしてなよ。」


 参った。
 なんて考えながら、ドリップしたコーヒーを氷の一杯入ったグラスに注いだ。


「キャッ、なにこれ!?」


「ふふっ、これが本当のアイスコーヒーさ。牛乳とシロップね。」


 梨華は、初めてらしく驚きの表情で少し湯気の立つグラスを眺めていた。
 ストローをグラスに刺すと、梨華が恐る恐る唇を当てた。


「えっ!冷たい、アイスコーヒーだわ!凄い!」


「ふふっ、今は目の前でなんてやらないのかな?ユックリ楽しみな。」


「は~い、パパ。アハッ。」


 シロップを二個と牛乳をタップリと注ぎ、幸せそうに梨華が微笑んだ。


「そうだ、今度のイブは三人でパーティーしないか?ママはどう?」
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