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アネゴ的カノジョ
第5章 陽と陰
 
「んっ……こら……マサっ…」

 頭を振る雅人の髪が、胸元から覗く深い谷間を撫で付ける。

 その感覚に余韻を残す杏子はゾクッと体を震わせ、柳眉を寄せながら無意識に腕に力を込めていた。

「ふぐっ……ね…ねえ…ひゃん………」

 更に撓わな胸へと押し付けられる雅人の顔。

 言葉ばかりでなく、手足をバタバタと暴れさせて息苦しさをアピールする。

 しかし、雅人の口の動きと撫で付ける髪の毛に、柳眉を寄せて瞳を閉じている杏子には見えていなかった。

「ま…マサ……あんま……動く…と……」

「ふぐぅぅ……うぅぅ………」

 雅人の様子も気付かず、徐々に顔を紅潮させていく杏子。

 離されない息苦しさに、杏子の撓わな胸の中で青白くなっていく雅人。

 数少ない登校中の生徒たちは、二人を遠巻きにして足早に過ぎ去っていったのだった。

「う…うぅ………」

 呻き声と共に、激しく動いていた雅人の腕もダランと脱力する。

「んくっ………ん……んん?」

 暴れる雅人が胸に与える振動に、顔を赤くし始めていた杏子。

 その振動が静かになった事で、漸く、固く瞑った瞳を開けてみた。

「うわっ! ま…マサぁぁぁっ!?」

 杏子の視界には、豊満な杏子の胸に顔を埋めながら全身を脱力した雅人の姿が飛び込んだのだった。
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