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おこごと
第4章 鬱刈色
「それじゃあ、水村さん、気をつけて帰るんだよ。」

隼人は、出来る限り、柔らかな表情を心がける。
先ほどより、幾分顔色が良くなったこの生徒は、静かにドアを締めていった。

この四月から、本業の他に、週に二回、母校でスクールカウンセラーをする事になった。
進学校、と言われるこの高校でも、イジメや家庭、または男女関係で、この部屋を訪れる生徒は後をたたない。


まあ、ここに来る生徒の半分は、隼人の容姿に興味を持った生徒だという事も、隼人はわかっていた。

また、深刻な悩みであればある程、この部屋を訪ねられない生徒もいる。
カウンセラー室の前に置かれた箱には、そういう生徒からの手紙が匿名で入れられる。
それに、返事を書くのも隼人の仕事だ。
ここで働きはじめて二ヶ月がたつ。
やりがいはある。
ただ、いくら話を聞いても、手紙に返事を書いても、手からこぼれ落ちていく砂のように、隼人には、誰かを救えた、という実感はない。
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