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おこごと
第1章 紺青
「あの、ありがとうございましたっ!勝手に乗り込んで、ごめんなさい!!」
ピョコンっと頭を下げる杏里を、男はチラリと見る。
「さっきのやつ、知り合い?」
「いえ、その、ちょっとだけ…」

しばし沈黙。

車は、大通りを走り抜け、大きな公園の脇に停まった。
「あのさ、時間ある?」
「えっ?」
「良かったら、何か食べ行かない?」

表情を緩ませ、流し目で杏里をみる男は、二十代半ば位だろうか。落ち着いた声音に、穏やかな話し方。
もしかしたら、もう少し歳上かも。
鼻も唇も眉までも形よく作られた男の濡れたような瞳が杏里を捉える。

もっと一緒にいたい。
「あっ、はいっ。」

「フッ、可愛いね。

じゃあこっちも食べていい?」

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