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銀の木洩れ日亭へようこそ
第2章 目を覚ます
ひんやりとした風が彼の黒髪を躍らせながら通り過ぎていく。

ジークが少し背を屈めて扉を潜ると、そこは鬱蒼と生い茂る木々に厚く包まれていた。

恐らく追われた末に紛れ込んだあの森の中に建っているのだろう。


家主がきれいに均したのかそういう場所を選んだのか、この小屋の周辺だけがぽっかりと草原になっており、前面にはなんとか馬車が通れる程度の街道が敷かれていた。

ずっと伸びた道の先は両端とも森の中へ消えていて、どこへ続いているのかわからなかった。


豊かに重なり合う葉の切れ間から空を見上げると、茜色から淡い藍へ美しく移ろいつつある。




「起きてきてる。もう平気?」

弾んだ響きを含んだ穏やかな声が、森の奥から風に乗って流れてきた。

深紅の瞳の少女が両手いっぱいに枝を抱えて戻って来るのが見えた。


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