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毒舌
第17章 別離の刻
足を止めた。
吹雪の笛に混じって
離れた場所で話す
人間の声が聞こえてきた。
耳をぴくりとそばだて、
会話を盗み聞きする。
――そいつの名を教えろ――
――嫌です。名を知った父上が何をするか、私だってわかります。……それに、名前なんてもう忘れてしまいました……――
「……おりょう、」
誰が聞くでもない呟きが
思わず口から漏れた。
――妖怪を庇うなど……この、恥知らずが!!――
――何故トビを退治しなくてはならないのです。私にはわかりません――
――人を殺める妖怪だぞ!?当然ではないかっ――
人間である退治屋の考えは
尤もな話だ。
妖怪が人を殺すことは
おりょうだって知っている。
退治屋の娘でありながら
妖怪の肩を持つというのは
なかなか考えにくい、
道理だ。