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毒舌
第17章 別離の刻


おりょうの部屋から
男の気配が消えて

ややしばらくした頃。


音もなく
部屋に足を踏み入れたが
別段驚きもせずに
おりょうは微笑みを見せた。


「ひでぇ面だな」


綺麗な口の端に
血が滲み
真っ白な筈の肌に
痣が出来ていた。


「平気よ、これくらい」


火鉢の中の温石を
布にくるみ
差し出してくる。


部屋の中は
雪風こそ凌げても
冷気は冬のそれだ。

おりょうの手足は悴んで
真っ赤に
なっているというのに


「いや、俺はいらねえ。お前が使え」


妖怪相手に
寒さだの暑さだの

人間ほど弱くはない。


「ほんと……外から来たのにトビは温かい」


頬を撫でる手が
氷のようだ。


「そんな格好でいるからだろ」


こんな真冬に
襦袢しか着ねえとか。

そんな気違いは
おりょうくらいだろう。


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