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毒舌
第33章 見えない魔の手
大人が四~五人くらい
乗れそうなそのスペースに
どんと立つ十字架。
変に存在感がある。
悪戯に笑うりおくんが
十字架の前に立った。
「一緒にいたの、彼氏?」
「え?こないだのライヴ?」
香島さんのことを
言われてるんだと思って
すかさず答えた。
「彼氏ではないけど、」
すると
りおくんは目を丸くした。
「え?違うの?」
「違います」
私がきっぱり言うと
りおくんは
安心したように
ちょっと笑う。
「琴美さん、ここに立ってみて」
「なあに?」
言われたとおり
りおくんの横に並ぶと
ちょっと高い場所ってだけで
店内の様子が見渡せる。
バーで歌手が歌うには
いい場所かもしれないけど
それにしては
狭いステージ……。
「何で十字架?」
「ここってね、何かSMの店だったんだって」
りおくんは
私の手をとって
十字架の端に
押し当てた。
「……は?」
聞こえた言葉と行動が
同時に処理出来ず
間抜けな声を出す。
SMと聞こえた気がする。
十字架の見えない裏側から
繋がれた手枷、
手首を
ガチャリと固定されて
ようやくSMがわかった。