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毒舌
第35章 呪縛
香島さんの背中に隠れるようにしてついていく。周りなんかろくに見てない。やがて連れ込まれた一室の慣れない景色を目の当たりに絶句。いかにもこれからやりますみたいな、中央のベッドとか、アレとかコレとか。――に立ちすくんでいると、後ろからカチャリとドアをロックする音がして近付いて来た香島さんがおもむろに私を抱きすくめた。
な、ん、で、す、と……!
一連の動きがあまりにもナチュラルで無駄がなくて、頭が真っ白になる。私の首もとに顔を埋める動作や息遣い、男らしい香り、逞しい腕、いつかの記憶もオーバーラップして体が硬直した。
『俺がいるのわかってて、いい度胸だな?』
そう!トビがいるんだからもっと自重して香島さん!
「ほんとはさ」
私の背中に香島さんのくぐもった声が落ちた。
「ほんとはわかってるんだ、頭では」
ゆっくりと感触を確かめるように動く腕はむしろ優しくて、けして乱暴ではなかった。
「もう諦めなきゃ、って」