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毒舌
第35章 呪縛
私にはトビがいる。誰より一番幸せになった。皆には聞こえなかったトビの声が聞こえた。トビの存在を知れた。トビに恋をした。会えた。結ばれた。
最高に幸せ。
トビの言いたいことが時々わからないけど、私が散々不幸にしてきた香島さんのこともトビは見てきたんだよね。
私は、自分を落ち着けるためにゆっくり息を吸った。嫌がってばかりだったり、なびきそうな自分が怖くて避けてもみた。その結果がさらに香島さんを追い詰めたなら。私だってもう逃げちゃいけない。
「……私、香島さんのこと、嫌いじゃないですよ……?」
トビが見てるのは恥ずかしいけど、見られてるからこそ正々堂々、でしょ。
「香島さんを最低だなんて、もう思ったりしないです」
自分だけ被害者です、みたいな顔を。私は、してきたのかな。
「好きなのはトビですけどね」
「……上等。俺のことも好きになっちゃうくらいメロメロにしてあげる」
小さく笑う香島さんが、でも歳上の威厳や威圧みたいなのはなくて。口ではああ言っても小さなこどもみたいに頼りなく思えた。前世の話がショックだったのかな。
後ろから抱えられてるから出来ないけれど、抱き締めて頭を撫でるくらいはして慰めたいような気分。