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毒舌
第35章 呪縛
心を閉ざせば無理矢理襲われて恐かったけれど、そうでなければきっと香島さんは優しい。
『百戦錬磨のお手並み拝見、』
(……トビ。悪趣味)
「抱くよ。いいの?」
改めて聞かれ、私は視線を足元に落とした。
ちょっと恐い。色んな意味で。
「嫌なら逃げていいよ」
香島さんの腕の中に捕らえられたまま言われても。よほど抵抗しないと逃げられない。
でももう。そんな抵抗をするつもりはなくて。
「逃げませんから……その気にさせてください」
恥ずかしい。勇気がいる。面と向かってだったら絶対言えない。
タガが外れたみたいに香島さんは私を抱き締めて、何度も痛いくらい好きって言ってくれた。
「辛い想いをいっぱいさせてごめんなさい」
辛さと愛しさは多分イコールで、どちらかが募ればもう片方も増える気がする。私もトビにそうだったから。