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毒舌
第36章 花びら


最大限まで我慢したつもりで、果てた瞬間は頭の中が真っ白になる。ぐったりと肉体を放棄して、時々小さく痙攣する度快感の余韻に打たれ、まだ私の中にいる香島さんに伝わる。

私の体を撫でて眺めながら香島さんが呟く。


「トビは出てこられるんだよね?」

「……?」


思考が追い付かず、目だけ香島さんに向けた。


「トビのキスマーク、まだ消えてないから…俺のはどうせすぐ消えるだろうけど」


私の体に刻まれたトビの痕に指を乗せて呟きながら、香島さんは笑う。


「今も出てこられるの?」

「何か用かよ」


そこに。突然姿を現したトビに、さすがに香島さんも息を飲んだ。


「………っ」

「誰が中に出していいっつった」

「……駄目とは聞いてないよ、……ていうか」


香島さんはトビを観察して笑う。


「勝ち目ないね。」

「何がだ」

「妖怪、っていうからどんなのかと思ったら。これはズルくない?」


香島さんも、人間の中ではイケメンだから大丈夫ですよ――という私の心の中で発したエールは特に誰にも届かない。トビはこの世のものとは思えないくらいの超イケメンなだけ。


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