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毒舌
第37章 禁断
人生初のリフトにビビりつつ、どうにか乗れたので一安心。見渡す限りの雪景色は今が冬じゃないかと錯覚させる。ロープで宙吊りのリフトは私と香島さんを乗せてゆっくり山を登っていく。重たいスキー靴にぶら下がっている二枚の板の下には地面が遠くて落ち着かない。
「高いところは苦手?」
「いえ……そういうわけではないですが、なにぶん初めてなので」
大人しく座ってれば大丈夫だよ、と軽く流されつつ。私は落ち着かない。
だいたい、誰も疑問も持たずに雪山を楽しんでいるみたいだけど、この山にはおそらく妖怪がいる。妖怪がここだけ雪を降らせている。
「……雪男かも」
「何が?」
考え込んでいたらうっかり口に出して呟いてしまった。香島さんは不思議そうに私を見ている。
「いえ、何でもありませんっ」
『別に香島なら驚かねえだろ』
それはそうかもしれないけれど、出来れば私は香島さんを巻き込みたくないし、何もなければないでそれにこしたことはない。よって妖怪が雪を降らせているだなんて報告もしたくない。
トビと香島さんがシンクロしたように私に「ふーん」と返して来た。何かしら別の考えを持っているけどあえて言わないときの返事!私も気付かないふりでやりすごそうとしたけど二人のシンクロが見事すぎて思わずこめかみがピクピクしちゃった。