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毒舌
第37章 禁断
外へ出るともう香島さんが来ていて先に準備までしてくれていた。何から何まで申し訳なく思っていると、萌絵たちに冷やかされてしまう。
「じゃあね琴美、」
「山頂にいい男いないかなぁ」
そんな二人を見送って、ふと思う。氷女さんの縄張りが山頂付近じゃないといいな。ゲレンデの辺りは人もいるし、大丈夫だとは思うけど。
遥か山頂はここからだと丁度滑る斜面は見えなくて、リフトは木々の隙間に飲まれていく。
「…………」
「どうかした?」
「あ、いえ。ちょっと山頂が気になって」
慌てて香島さんに笑顔を返すと案外真面目な顔の香島さんがいた。
「何か心配事?」
「あ、……えーと。多分大丈夫、です。私が気にしすぎなだけだから」
だから気にしないでくださいね、と。続けようとしたものの、先に香島さんが呟いた。
「もっと頼ってくれても大丈夫だよ」
「俺が」
「琴美ちゃんを好きでいる気持ちは」
「ずっと変わらないから」
「俺は遠慮しなくちゃ駄目だけど、琴美ちゃんは遠慮しなくていいんだよ」