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毒舌
第37章 禁断
驚いてしまってすぐには言葉が出てこない。いくつものことが頭の中で跳ね回る。
両思いを諦めた香島さんは片思いを諦めない。徹底した愛情に息をするのも忘れる。
この山のどこかに妖怪がいることも、香島さんには関係ないのに、私を好きだというだけですべて受け入れようとしてくれる。
「なんか、それって、フェアではないです、ね……」
やっとのことで返した声はそんなどうでもいいことで。だけども香島さんはそれすら笑顔で全部受け止める。
「知らなかったの?恋愛なんて最初からフェアじゃない。惚れたほうが負けなんだよ。それでも――負けでもいいって思える相手にだから、成立する感情なんじゃない?」
ほんとは負けたくないってムキになるのに、最後には折れちゃう。好きになったんだから仕方ないって思えちゃう。それはまるでトビに対する私のようで。
恋愛にフェアを求めるほうがナンセンスだったのか。でも。
『お前にとっちゃ香島は恋愛対象じゃねえから、フェアじゃないのが気に入らないんだろ。ワガママだな』
ぐふぅ。香島さんにはそんなこと言えやしないよ。