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毒舌
第37章 禁断
お昼になってもロッジに恵美と萌絵の姿はなかった。たまたま近くの席でカレーを食べていたOL仲間の中に近堂紫帆先輩を見かけて声をかけてみる。
「坪北さんたちならさっき山の上の方で見たわよ。まだ滑ってるのかしらね」
「うちの店の子も戻ってない子多いわ」
近藤さんといた別の支店のひとも呟く。
「……香島さん。ご飯食べたらちょっと山頂のほうに行ってもいいですか?」
「俺はいいけど。何でまた?」
『やめとけ。天気も変わる。これから荒れるぞ』
窓から外を見ると雪のゲレンデと綺麗な青空が見える。どう見てもいい天気だ。
「雪なんか降るかなぁ?」
「――トビがそう言ってるの?」
頷く私に香島さんは形の良い眉を寄せて顎に手を添えた。
「何かあるなら俺が行くから琴美ちゃんはロッジで待ってれば?」
初心者に山頂はキツイだろうことを香島さんは考えているのか、でも吹雪になったらいくら香島さんだって危ないのは一緒。
私にはいざとなればトビがいるから、スキーは下手でも大丈夫なんだけど。
「この山には妖怪がいるらしいんです。天気が悪くなるならなおのこと、皆に戻ってもらわないと……」
「とはいえ皆に妖怪がいるなんていうつもりはないでしょ。何て言って戻らせるの?」
確かに。