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毒舌
第37章 禁断
「――ていうか。驚かないんですね」
私がちょっと拗ねたように香島さんを見ると彼は余裕の笑顔を返した。
「どうせそんなとこだと思ってた」
香島さんってエスパーに違いないと思うのよね。
『鈍感なお前からしたら香島はエスパーだな』
(ちょ、まるで私だけが鈍いみたいに!)
ご飯を食べてリフトからゴンドラ、またリフトに乗り継いだ頃。あんなに晴れていた空は確かに雲行きがおかしくなり始めていた。風も刺すように痛い気がする。高い場所ほど気温が下がるとは聞くけどこれはなんか下がりすぎじゃない?
『だから。氷女の仕業だっていってんだろ』
私が隣でガタブルと震えていたら香島さんが暖めるように腕をまわしてきたけど正直気休めにもならない、寒い。
「……これは、キツイ」
ガチガチと歯の根があわない。私、寒いの苦手だった。
「あれ。お探しの上野さんたちじゃない?」
「はぅあ!萌絵と恵美!」
綺麗なラインを描きながらあっという間に滑って下山していく二人を呆然と見送った。二人が下へ向かったならもう私もリフトなんか降りたい。
「気持ちはわかるけど。リフトは途中で降りれないから、落ちるから」
涙目の私を取り押さえて香島さんは苦笑する。
『あーあ。だからやめとけっつったのに。あーあ』
でもね。
リフトをこの時本当に飛び降りておけば良かったって思うの。下は雪だもの。足の一本や二本骨折したってそんなくらいで済むなら、ぜんぜん良かった。