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毒舌
第37章 禁断


長い時間リフトにただ座っていたせいですっかり体が冷えきっていた。山頂に到着する頃には雪と風が視界を閉ざして、自然の悪意を感じた。――この場合は妖怪氷女の悪意かもしれない。

まるで待ち構えていたように、そこには一人妖怪がいたの。辺りにはもう他に誰もいなくて、姿を隠す気もさらさらないのか堂々と妖怪がいた。


「よう。久しぶり」


雪の中とは思えない薄手の着物。肩の辺りで袖を引きちぎってあるから二の腕は丸出し。妖怪だから寒くないのかな。


「あのおチビがすっかりいい女」


香島さんが見てもそれは怪しい妖怪だと映ったようで、私を守ろうと背中に隠してくれた。


「神姫じゃなくなった、か」


ていうか、さっきからあの妖怪は何を言っているのかしら。


「……知り合い?」

「いえ、わからないです」


私の記憶にはないけど、女というからにはきっと私のこと。私と香島さんが小さな声でやりとりしたのもこの妖怪には聞こえてるみたい、吹雪なのに。


「何だよ、覚えてねえとはつれねえな。ガキの頃遊んでやったおじさんだよ」

「何それ……まるでただの変質者」


私が思わず呟くと妖怪は笑った。


「あながちそれも間違ってないな!腹の中の神の器がほしくてエロいことをたくさんしたからな!」

「なんですって!」


記憶にはないけど私は声が裏返った。幼少時代見知らぬ妖怪に悪戯されていたなんて!


「……くっそ、てめぇよくも今さら出てこれたな」


さらさらの髪をなびかせて、いつの間にかトビがそこにいた。さっきまで笑っていた妖怪の顔つきもすぐに変わる。


「それは。こっちの台詞だ、トビ夜叉――」


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