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~散花~
第5章  寝物語

「私は都育ちだけれど、早くに親を亡くして、十の頃から米屋で住み込み奉公をしていたの。

後見人も何もなかったけれど、努力して、貴人の身分と何不自由のない暮らしを手に入れたわ。でも――」

玲利の瞳に翳りがさす。

「私が帝の閨に侍ることができたのは、20年でたったの2回だけだった。一度目は“選女の試し”で。二度目は、入内して二年目の春に。

しかも私は、帝と声を交わしたことすらないの。子供など授かるはずもないわよね」

自嘲気味にほほえんだ。

それでも玉蘭を揉みほぐす手は、変わらず優しく丁寧だった。




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