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執事とお嬢様の禁断の模様
第3章 私を見て
 自分の心臓が大きな音を鳴らしている。


 手は恥ずかしさと緊張でさらに小刻みに震えた。


 私はぎゅっと目をつぶる。



「……お嬢様…? どうかされたのですか? 私は、
夕飯の支度をしなければならないのですが……」

「あ……」



 そうだ、浅葱も仕事があるんだ……

 早く、離さないと……


 でも……



 手を離せば浅葱は行ってしまうんだと思うと、
途端に寂しさが込み上げる。



 ………



 ……ねぇ、なんで離せないの、私……



 恋人同士なのに寂しいなんて、言えるはずもないのに。


 言える勇気もないのに……



 ここですがったらどうだろうと、寂しいと言ったらどうだろうと、
私の思考があらぬ方向に行く。



 ダメ…甘えちゃ……



 甘えたら、浅葱に迷惑。



 でも、本当はそばにいて欲しいの……


 わがままだってわかってるのに。


 どうして私はこんなに不安定なの…?


 いつもはこんなにならないのに。


 なんで、こんなにセンチメンタルになってるの?


 胸が苦しくて、声が出ない。


 なんで、こんなに寂しいの?


 苦しい。苦しい。苦しい。



 なんで、こんなに胸が痛いの?



 目頭が、熱くなる。




 なんで、こんなに辛いの……―――




 堰が切れたように、涙が溢れ出す。


 理性と本音が交差する。


 もう、わけがわからない。


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