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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「良い加減に待ちくたびれたぞ、美桜」
顔を覗かせたのは四十半ばほどの中肉中背の男だった。全体的な印象としてはどこにでもいる平凡な男であるはずなのに、何故か存在感のある男だ。それが男の放つ鋭い眼光によるものなのだと気づいた。
上物の着流しに羽織りといったなりは、どう見ても大店の主人といった風体であり、余裕を感じさせる。顔は笑っているのに、眼だけは笑っていないのがどこか不気味にすら見えた。
顔を覗かせたのは四十半ばほどの中肉中背の男だった。全体的な印象としてはどこにでもいる平凡な男であるはずなのに、何故か存在感のある男だ。それが男の放つ鋭い眼光によるものなのだと気づいた。
上物の着流しに羽織りといったなりは、どう見ても大店の主人といった風体であり、余裕を感じさせる。顔は笑っているのに、眼だけは笑っていないのがどこか不気味にすら見えた。