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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
見上げた幼い栄佐の視界に映ったのは鈍色の低く垂れ込めた天(そら)と雲間からひっきりなしに舞い落ちてくる白い花びら。純白の花びらが風にくるくると舞いながら落ちてくる光景は現実離れしていて、まるで物語の世界に迷い込んだかのようだった。
あの頃、孤独だった小さな栄佐にとっては乳母だけがたった一つの心のより所であった。その乳母もあれからほどなく暇を出され、涙ながらに屋敷を出ていったのだ。
あの頃、孤独だった小さな栄佐にとっては乳母だけがたった一つの心のより所であった。その乳母もあれからほどなく暇を出され、涙ながらに屋敷を出ていったのだ。