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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
 常にも増して丁重な挨拶に、お彩は何か感じ取ったようである。何か言いかけたお彩をを市兵衛が制した。
「おっかさん。申し訳ありませんが、ここからは私と小紅さんの二人で話をさせて頂けませんか」
 お彩は市兵衛を見、それから小紅を見た。
 もしかしたら、これが京屋の大内儀に逢える最後となるかもしれない。小紅はきちんと膝を揃え、両手をつかえた。
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