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第10章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　心の嵐

「内儀さん、この度は私の身勝手でご迷惑をおかけしまして、何とお詫びしたら良いか」
　せめて最後となるなら、きちんと挨拶しておきたかった。小紅にも隔てなく接してくれ、可愛がって貰ったのだ。
　お彩は微笑んだ。
「詫びだなんて。そんなことはよろしいのよ、小紅さん。人の心はどうしようもないものだもの。先代の市兵衛と私もこうして夫婦となるまでには色々と他人さまにも言えない事情がありました。ですから、どうかもう気にしないで下さいな」