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サイドストーリー
第5章 恋心あれば水心
呆れた。
人の社内メール勝手に読んで(就業中だけど)
勝手に勘違いして
勝手にエントランスで待ち伏せして。

「山田さんさぁ。束縛し過ぎ!」

冷めた目でそう言えば
目に見えて、ガーンとしてる。

「そんなに束縛したら息がつまるんですけど」

追い打ちをかけた発言に目を見開いた。

「あの。ヨウちゃんってサッカー選手です。
今から私たち、等々力にサッカーを見に行くんです。
約束の時間って言うのは、ゲームの始まる時間です。
自由席だから急いでるんですけど」

久美の仕事よりも真剣な言葉に山田さんは、え?と驚く。

「希望がナンパされないように私が責任を持って見張ります。
だから、行ってもいいですか?」

言葉づかいは丁寧だけど
はっきり「希望の手を離せ!」と要求している。

「あ・・・あぁ」

久美の真剣な言葉に押し切られるように私を離した。

久美と私はお目当てのサッカー選手を見に
年に数回、直接スタジアムに観戦に行く。
結構、熱烈なファンだ。

「山田さん、ヨウちゃんって聞いて、すぐに分からないほど
希望の趣味を知らないんですね・・・」

クスっと笑った久美に山田さんは何も言えない。

「ほら行くよ!」
私たちはそんな山田さんにかまっている暇もなく
少しでもいい席に座るためにエントランスを飛び出した。
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