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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

「来ないでって、言ってるでしょう……っ」

 立ち上がったヴィヴィは、ネクタイで拘束された両手で握り締めた、金のペーパーナイフを相手に向けて翳した。

 その表情は死に物狂いのそれだったけれど。

 シャツワンピの合わせ目から覗く薄い胸の内は、

 もはや違っていた。

(あの時……。

 あの時、死ななかったからだ……。

 あの時、お兄ちゃんが結婚した時、

 本当に死んでおけばよかったのに。

 こんな、無駄に生き永らえていたから、

 お兄ちゃん以外の男性に、躰を奪われたりするんだ――)

「お嬢様……」

 こんな暴挙に出ておきながら、未だその固有名詞で自分を呼ぶ男。

「来ないでっ もう私に触らないで――っ!!」

 涙はいつの間にか止まっていた。

「そんな物を使って、どうせ私に腕力で敵う訳が無いでしょう?」

 続けられた言葉には、嘲笑が混じっていた。

 確かに――。

 女の中でも華奢な自分が、腕力でこの男に敵うなんて、到底無理に思えた。

 切り付ければ相手を負傷させられるナイフならまだしも、

 自分が手にしているのは、

 相手に傷を負わす事の叶わぬ、刀を落としたペーパーナイフ。

「……こない、で……」

 残り1mに迫った相手から、少しでも逃れようと後退りするヴィヴィ。

「さあ、それを私に渡してください」

「来ないでったらっ!」

 両腕を振り上げて、片手を伸ばしてくる相手に振り下ろすが、いとも簡単に避けられてしまい。

 震えが止まらない両腕。

 そして、背に当たったのは、部屋の隅の壁。

「……嫌なのは最初だけです、お嬢様。先程も天国を見たでしょう? すぐに良くして差し上げます」

「―――っ」

「お嬢様、ナイフをこちらへ」

 もう、駄目だ。

 ペーパーナイフを持つ手の震えが酷くなり、力が入らなかった。

 もう、駄目だ。

 もう、何もかも、お仕舞いだ。

 私は、この男に、

 いや。

 “自分の運命” に負けた――。
 
 だから、もう、お仕舞い。

 いいや。

 もう、終わりにしよう。

 これ以上、“自分” を貶められる前に、

 己の、この手で――。

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