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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

「……ん……っ ぁ……、ぅん……っ」

 敏感なそこを舌で愛されると、何故か目を開けていられなくて。

(私が咽喉仏、舐めたくなったのと、同じ……?)

 そんな間抜けな事を思いながら、兄の舌に酔っていると。

「キスさせてくれないなら、可愛いお耳を食べてしまおうかな?」

 匠海はその言葉の通り、耳たぶに吸い付いてきた。

「んっ ……ふ、あ……」

 勝手に漏れる声に戸惑うヴィヴィに、熱い舌は縦横無尽に這い回り。

 耳の後ろを執拗に舐め上げていたかと思えば、耳の穴にまで舌を捻じ込まれて。

 ちゅぷん、くちゅ。

 濡れた舌の蠢く音に、鼓膜のみならず、バスローブから覗いた細腰も震え始めていた。

「キス、させてくれる?」

 直接耳に吹き込まれた懇願に、腰から生まれた震えが一瞬にして頭の先まで突き抜け。
 
 シーツと触れ合っている背中が、何故かざわざわと騒がしく、むず痒かった。

「――っ や、やだっ」

 口付けを嫌がり続けるヴィヴィに、兄は零した苦笑で耳朶をくすぐる。

「ふ、それは残念。じゃあ、もっと誘惑しないと」

 誘惑?

 何の為に?

 灰色の大きな瞳が、自分と同じ色を宿す目の前の瞳を覗き込む。

 ああ、私に口付けする為に。

 そして、

 私の中の “ヴィクトリア” を、

 死んだ筈の “ヴィクトリア” の息を、吹き返させる為に――。
 
 徐々に離れていく匠海の瞳に、不思議に思いながら視線を落とせば、

 だいぶ肌蹴てしまっていたバスローブの合わせを、

 肩を抱いていないほうの手で、ゆっくりと開いている兄がそこにはいて。

「いっ いや……っ」

 オフホワイトのタオル地の遮りの無い、自分の生白い躰が。

 僅かな膨らみしか持たない乳房が、匠海の眼前に晒されていて。

 咄嗟に、拘束された両腕で胸を隠したヴィヴィだったが、

「ふ……。ヴィクトリア、分かってる?」

「……え……?」

 自分の肩を抱いている兄の腕が、何故か微かに震えていた。

「今 “頭隠して尻隠さず” の状態になってるぞ?」

 匠海のその言葉に、一瞬ぽかんとしたヴィヴィ。

 そして、何故か熱い視線を感じるある場所に、視線を送れば、

「~~~っ!?」

 胸どころか一番大事な場所を露出している自分に、心の中で発狂した。

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