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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   


 野良猫と呼ばれようが、すっぽんと揶揄されようが、

 自分の身を守るためだったら、何だってやってやる!

 死ぬけどっ!
 
 死ぬつもりだけどっ

 だからって、何でもかんでも許されると思わないでっ 

 自分の死に際は、自分で決める。

 「死ぬ前に1回ヤラせろ」とか言われても、

 聞いてあげる筋合いなんて、これっぽっちも無いんだから――っ!


 ――そう、心の中で絶叫していたヴィヴィ。

 ただ、彼女の最大の弱点にして欠点は、

 それを本人を目の前にして実際に叫ばないところ、

 にあるかも知れない――。

 よって、ベッドに押し倒されながらも1人百面相をしている妹を目の前にしても、匠海の様子は変わらなかった。

「お前がどんなに否定しても、

 俺にとってのお前は “ヴィクトリア” でしかない。

 だから、やめてやれない――」

(本人は無自覚だが)またもや胸を隠す用しか成していない両腕を掴み上げられ、

「何するのっ!!」

 そう大声で喚いたのに、

 バスローブの太い紐で拘束された両の手首は、易々と金の頭の上に縫い止められてしまった。

「嫌っ! 私に触れたら、舌噛んで死んでやるっ!!」

 瀕死の形相で自殺を宣告する妹のどこに、女の色気を感じるのか。

「ふうん? じゃあ俺は、ヴィクトリアが舌噛み切らないように、気持ちいいキスをするまでだ」

 そう言い返した匠海には、己の舌を噛まれるという危機感は無かったのだろうか。

 本当に顔を近付けてきた兄に、ヴィヴィは何故か焦って顔を背けた。

「困った子だな……。いつになったらキスさせてくれる?」

 そう言いながらも、匠海は妹の弱い首筋へと、また舌を這わせ始めた。

「やめ……っ!? やだっ やだったらっ」

 兄はかつて知ったる妹の弱いそこを丹念に愛しながら、徐々に抗う気力を奪おうとしているようだった。

 そして、まんまとそれに引っかかりそうになった、その時。

 柔らかく這わされた掌の感触を、皮膚の薄い膨らみに感じ、

 兄の舌の熱さに緩みかけていた目元が、かっと大きく見開いた。

「と、瞳子さんに触れている手で、私に触らないで……っ」

 そう発したヴィヴィの気持ちなんて、きっと誰にも解ってなんか貰えない。

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