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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

『おお、おおっ! 神よ……っ!』

 大げさに胸を喘がせる兄に鼻白んだ妹は、シャツの合せから細い片手を忍び込ませ。

『「神よ!」……じゃないってば!

 「追伸――」』

『追伸……?』

 乱れた黒髪の隙間から自分を見上げてくるその男の、逞しい胸筋の上。

 心臓の場所をぐっと掌で押し込み、最期のルルのセリフを唇に乗せる。

『「私を救おうなどとは、ゆめゆめ思いませぬよう――」』

 オペラ『LULU』では、

 手紙を最後まで書き終えたシェーン博士は、力尽き、自分の中に閉じ籠ってしまう。
 
 しかし、

『もう……後は、死刑 “執行” だけか……』

 そう呟く目の前の匠海は嬉々として “捨てた筈の女” の全裸を眺めていた。

 満足そうに ふんわりと微笑んだヴィヴィ。

 「良く出来ました」とばかりに、大きめの唇のすぐ傍に口付けを落とせば、

 中の匠海が歓喜し、激しく脈打っていた。

(ふん……、下らない……)

 異様なくらい心酔していた筈の『LULU』が、

 ヴィヴィの中で一瞬にして色褪せ、その輝きを失っていく。
 
 19歳の時の自分が、裏切った匠海に対して、

 言えなかった言葉、

 出来なかった行動、

 それら全てを成し遂げたルルと、同じ言動を取ってみても、

 今のヴィヴィが心から救われるなんて事――ある筈も無く。



『お前が書かせてくれるなら』



 何てホラ吹きなんだろう、この男は。

 得たばかりの妻子を放り捨てるなんてこと、

 絶対に出来やしないし、

 する気も無いくせに――。


「ヴィクトリア……」

 飢えを滲ませた双眸で追い縋ってくる実の兄を、

 ヴィヴィはただただ、慈愛の微笑みで以て柔らかく包み込む。



 私は “蛇” だ。

 ルルの様に人を惑わし、災いをもたらし、

 心から愛する人をも、毒を以て制するしか能の無い、

 手に負えぬ猛獣――。



 そう己に言い聞かせれば、幾分か胸のつかえも取れた気がして。

 シャツから剥き出しになった、広い肩に額を預け、

 散々焦らしてしまった、互いの性器を昇華させるべく腰を振る。

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