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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

「ヴィクトリア? どうした、苦しい?」

 背を支えていた腕で更に抱き寄せられ、覗き込んでくる端正な顔から視線を逸らしても、

 恥ずかしい場所に押し当てられた熱く硬い感触に、細い咽喉の奥で悲鳴と紙一重の音が鳴る。

「な、何でもないっ 離して……」

 両手でシャツの肌蹴た胸を押し返すも、

「もう少し、こうしてたい……」

 逆により抱き寄せられ、首元に顔を埋められる始末。

「ダ、ダメ……っ」

 早まり過ぎた鼓動に、息が乱れ始めて。

「どうして?」

「ど……どうしても……」

 大きな瞳を揺らせながら、乱れた息の中、何とか声を振り絞れば。

「ほら……、沢山溢れてきた。トロトロだ」

 互いに触れ合ったあられもない場所の具合を、耳元で湿った吐息と共に囁かれて。

「い、言わないで……っ 離してぇ!」

 だって、もう達しそうなところまで、長い指に追い立てられていたのだ。

 物足りないと咽び泣く蜜壺が「もっと頂戴」とよだれを垂らすのは、仕様の無い事。

「ヴィクトリア……」

「………………っ」

「俺を見て?」

 片腕の抱擁を緩められ、恐るおそる兄を振り仰げば。

「……――っ」

 途端にかち合った、互いの視線。

 真っ直ぐに射抜いてくる切れ長の瞳に対し、

 大きな瞳は ゆるゆると揺れ、何とか相手の視線を受け止めるのが精一杯で。

「拒絶しないのか?」

 そう指摘され、はっと我に返れば、

 もうぐちょぐちょに濡れた下の口に、くぷくぷと音を立てながら押し当てられるものを感じ。

「…………っ や、やめ――」

 どくどくと拍動する胸が苦しくて。

「ほら、もっと強く否定しないと、入っちゃうぞ?」

 咄嗟に両腕を足元へと伸ばすも、

「や……!? だ、め……っ」

 細い両脚を、片腕で纏めて抱き留められてしまい、

「駄目?」

 少し拗ねた様子で覗き込んでくる匠海に、

「……駄……目……」

 戦々恐々のヴィヴィは、ただただ同じ言葉を繰り返すだけ。

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