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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 8月23日(水)――渡英12日目。

 オックスフォードの屋敷には、珍客(?)が訪れていた。

「ちょっ ダリル! このワンピ、着たいっ」

「え~~、サイズ、入るかしらン?」

「~~~っ!? 入るに決まってんでしょ!」

 2階フロア中に轟く、キャンキャン賑やかな応酬。

「てか、マドカ……。そんなミニ、履くの……?」

 少々呆れ声のクリスの指摘に、ダリルのクローゼットに頭を突っ込んでいた 真行寺 円は、焦茶色の頭をぐりんと振り向かせ、

「おうよ! 実は、夏バテで体重4キロ落とすの、成功したんだっ」

 くびれの目立つ腰に手を添え、モデル顔負けのポーズをとる。

「そんなに元気なのに、夏バテ……?」

 約1ヶ月半前に真行寺邸に世話になった時より、確かに ほっそりしているが。

 どこからどう見ても元気溌剌な親友に、ヴィヴィは金色の頭を傾けた。

「涼しい英国に到着した途端、すっかり元気になった! ふっふっふ~っ」

 カラコンで黒目を大きくした円は、にんまり嗤うと。

 対面して2時間も経たないダリルと、またクローゼットに向かい、あ~だこ~だと、ファッション論を展開し始める始末。

(す、すごい……。マドカもダリルも、初対面 強すぎでしょ……)

 日本の外交官を目指し、今も東大4年生で頑張っているマドカの “人心掌握術” に惚れ惚れしていると。

「よっし、これに決~めた! てか、クリス。着替えるがら出てって」

 まるで飼い犬に「GO HOME!」と命令するかの如く、人差し指で扉を刺した円に、

 女子3人(?)に囲まれて、男子1人で弱い立場のクリスは、

「はいはい……」

 そう呟きながら、大人しく凭れ掛かっていた壁から背を離す。

 が――

「それとも、ど~おしてもっ「マドカ様の生着替えっ 拝まして下さいっ」て土下座するなら、考えないでもないけれど?」

 投げキッスを飛ばしながら「うっふん❤」と挑発する円に、

「えっと……勘弁、して下さい……」

 まるで胃もたれでも起こしたかの様に、弱々しく許しを乞うたクリスは、

 そそくさと部屋から退散して行くのであった。





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