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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

 空腹も満たされ朝食の席を立ったヴィヴィは、着たままだったバスローブから(色気もくそも無い)ジャージ素材の半袖マキシ丈ワンピに着替え。

 リビングに2つ据え置かれた3人掛けソファーの1つに、腰を下ろしたのだが。

 正直、その辺りからの記憶が無い――

 リンクでの夜練に、兄から曝された過去の過ち。

 そして3時間にも満たぬ睡眠後の、2時間の陸トレ。

 要するに、疲労困憊のヴィヴィは気付かぬ内に、ソファーで爆睡してしまっていた。



 2時間ほど微動だにせず眠りこけ。

 尿意と咽喉の渇きを覚え覚醒し、ほぼ夢遊病者の様に事を済ませ。

 また同じ場所に倒れこもうとした妹に声を掛けたのは、いつの間に着替えたのか。

 ショートパンツにランニングタイツ――という出で立ちの匠海。

「1時間ほど走ってくる」

「………………」

 ランニングサングラスを手に微笑み掛けてくる兄を黙殺し、自分で用意した覚えの無いブランケットに潜り込もうとし。

 けれど、ふと脳裏に過ぎった疑問だけは、硬く噤んでいた唇から零れ落ちた。

「……匠斗、は……?」

「ん? ああ、匠斗は安堂の家にいるよ」

 寄越された返答に、金色の頭が微かに傾く。

「……安堂……? あぁ……」

 それだけ呟いたヴィヴィは「もう用は無い」と言わんばかりに革のソファーに寝そべり、また重い目蓋を下す。

「行ってくるな」

 リビングから遠ざかって行った足音は、やがて玄関の開閉音を立てたのち消え去った。

 ソファーに根っこが生えたが如く、全身が重く下へ下へと沈み込んでいく。

 どろりと粘度高く融解していく、意識と思考。



 安堂――



 そういえば、そんな苗字だったか。

 私の義姉の旧姓は。




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