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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

「もう一回っ」

「え?」

「もう一回やろうって言ってるのっ!」

 噛み付かんばかりに “泣きの一回” を要求する妹に対し、

 兄はこのゲームに飽きてきたのか、広い肩を落としながらしぶしぶ頷く。

「え~~? まあいいけれど。じゃあ俺のは1つも見つかっていないから、隠し場所はこのままでいいよ」

「……~~っ!?」

 思わず かっと頬を紅潮させたヴィヴィだったが、それ以上何も喚くことなく、

 兄の手から己のピンク・エッグを毟り取ると、回れ右して再び隠しに向かう。

(くっそぉ!! めっちゃバカにされてるぅ~~っ)

 今度こそは匠海に簡単に見付けられない様、念には念を入れて隠してやる。

 花瓶の中

 クローゼットの奥の奥

 ベッドのダブルスプリングの中

 枕カバーの中

 そして、予備のトイレットペーパーの芯の中

 6部屋それぞれに入念にエッグ・カプセルを隠せば、兄妹は再びエッグ・ハント2戦目へと突入した。



 なのに。

 血眼になり床を這いつくばってまで探しまくったのに。

 残り時間2分を切っても、兄の水色の卵の行方は全く知れなかった。

 絶体絶命のピンチとは正にこの事。


『俺が勝ったら、こちらの要求も聞いてくれるんだよな?』


 匠海は要求の内容について『それは後でのお楽しみ』とぼかしていたが、

 そんなものヴィヴィにとっては「お楽しみ」である筈も無く。

(く、くそぅ……っ かくなる上は――)

 隠し場所として限定されていた2階から、そろそろと足音を消しながら階下へと降りたヴィヴィ。

 そして向かったのは、何故かキッチン。

 大きな冷蔵庫をそっと開き、目的のモノに狙いを定めた、その時――

「ヴィ~~ヴィ~~」

 すぐ真後ろから降ってきたその声は、呆れ返った男の声で。

 ぎくりと細い肩を強張らせたヴィヴィは、恐々と背後を振り返る。

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