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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

 小気味良く立つ包丁の音に、ブランケットを抱き込んでいた腕が煩わしげに身じろぎし。

 鍋から立ち昇るアルコールの炎の熱気に、閉ざされて数刻経つ目蓋が その重さを和らげる。

 微かに持ち上げられた目蓋が作り出す、細長い輪郭。

 間接照明にしっとりと輝くグランドピアノ越し、ダイニングの先に続くキッチンでは、

 集中した面持ちで匠海が腕を振るっていた。

「………………」 

 どうやら、また眠ってしまったらしい。

 レースのカーテンしか引かれておらぬ居室には、もはや日の光は差し込まず、

 おそらく3時間は爆睡したであろう身体は、同じ体勢を取り続けていたせいか だる重い。



『2人とも、とにかくゆっくり休んで、無理だけはしないようにな? 身体を壊しては元も子もないんだからね』



 わずか4日前、牧野マネージャーから掛けられた忠告の言葉が、淀んだ思考の中に浮かび上がる。

 自分で思っていたよりも、世界選手権までの追い込みと、本番、

 そして国別対抗戦、アイスショーに旅行の収録という怒涛のスケジュールは、心身を疲弊させていたらしい。

 むっくりと上体を起こし、床にブランケットが滑り落ちるのも構わず のろりと立ち上がる。

 光に群がる夜虫の様に、煌々と明るい場所へと歩を進めれば、

 まるで墓場から抜け出したゾンビの如き生気の無さで寄って来た妹に、気付いた兄は 一瞬ぎょっと硬直していた。

「びっくりした……。起きたのか」

 寄越された驚きの声は黙殺し、寝乱れた髪のまま一直線に向かったのは大きな冷蔵庫の前。

 そこから気付け薬に最適なものに目星を付けたヴィヴィは それだけを手に、明る過ぎて目に痛いキッチンを出た。

 ダイニングのサッシを開き裸足のままウッドデッキへと踏み出せば、当たり前だがヒンヤリとした冷気が瞬時に身体を駆け上り、

 一瞬ふるりと震えたヴィヴィは、広いデッキにドシンと構えた籐網のチェアの上に逃れた。

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