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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

「で、話って……?」

 ダイニングテーブルの上を埋め尽くす、海鮮祭りと言わんばかりのディナーの数々。

 目の前に腰掛けた妹から投げ掛けられた問いに、兄はシャンパンをフルートグラスに注ぎながら「ん?」と返す。

「話があるから わざわざ、葉山くんだりまで連れて来たんでしょう?」

「……? ああ、そういえば」

 匠海のそんな適当な返しに、じっとテーブルを睨み降ろしていた灰色の瞳が、胡乱気に持ち上がる。


 『そういえば』――?


 人を脅して無理やりこんな所まで拉致してきたくせに、まるで当初の目的を忘れたかの様な匠海の振る舞いに眉根が寄る。

「まあ、今 話してるじゃないか」

「…………はぁ…………?」

 不機嫌さを隠しもせず、前面に押し出す妹に対し、

「ヴィヴィの声が聴きたかったんだ」

 そう囁いた兄はというと、真っ直ぐに目の前の女を見つめていた。

「面と向かって会いたかった。ただただ、ヴィヴィと一緒にいたかった。それだけだよ」

「………………」

 返されたまさかの答えに、怒っている様な当惑している様な微妙な表情を浮かべたヴィヴィに、

 ふっと笑んだ匠海は「これも食べろ」「あれも食べろ」と大皿に盛られた魚介類を取り分けたのだった。



 ディナーの用意がある = 今夜も別荘に滞在させられる

 その等式を小さな頭の中で導き出したヴィヴィは、押し付けられる料理を黙々と食し。

 追い立てられる様に入浴までも済まし。

 まだ21時にもならぬ早い時間だというのに、もう就寝準備万端だった。

 キッチンの片付けを終えた兄から「いるか?」と寄越された缶ビール。

 それをチビチビやりながら、何故か大きなオットマンに上半身を凭れ、床に座り込んだヴィヴィは、

 ふぬけとは かくや――

 ぼへ~~と気の抜けた状態で、サッシ越しの夜の海を眺めていた。

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