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NOROI〜呪い〜
第29章 最後のラブレター
澤井 香澄さま


貴女がこの手紙を読んでいる頃、既に僕はこの街にはいないでしょう。

急な話で驚いたことと思いますが、落ち着いて少しだけ僕の生い立ちを聞いてください。


僕の母は僕が幼い頃、セールスマンと浮気をして家を出ていってしまいました。

それからというもの、父は酒に溺れて僕に暴力をふるうようになり、死にかけたことも一度や二度ではありません。

しかし僕は乱暴する父より母を憎みました。

母が父を裏切ったりしなければ、こんなことにはならなかったはずです。


そんな ある日、バイト先に客として来た母と偶然再会しました。
僕は一目で分かりましたが、向こうは全く気づきません。


考えるよりも先に僕の口は偽名を名乗り、他人を装って母に近づき純朴な青年を演じました。



…そろそろ気づきましたか?




半年もの間、貴女と同じ部屋で暮らして偽りの愛を囁き、何度も身体を重ねた男は崇という名の23才の大学院生などではありません。

貴女が昔、紙くずのように捨てた実の息子、18才になったばかりの聡史です。

ああ、今の貴女の顔が見られないのが残念だ。


血の繋がった息子の子供を腹に宿した貴女がこの先どう生きてゆくのか、地獄で見守っています。





さようなら、母さん








愛しているよ





___________聡史



(終)



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