この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
NOROI〜呪い〜
第30章 きょう ふの味噌汁
「いい加減にしてよ!」
新婚生活三週間目にして、三重子の堪忍袋の緒が切れた。
夫が味噌汁を飲みたいと言うから作ったのに「お袋の味と違う」と、一口で止めてしまうからだ。
義母に味噌の種類を聞き、ダメ出しの度に濃度を変えて出したが夫は全て残した。
「もう作らない!そんなに飲みたかったら実家に帰れば?」
もちろん三重子は本気で言ったわけではない。
しかし夫は黙って立ち上がると本当にそのまま出ていってしまった。
「…何よ、マザコン!」
夫はその後、一週間も帰って来なかった。
離婚という選択肢が三重子の頭から離れず、もともと苦手だったこともあり食事の支度をするのが億劫になる。
仕事帰りに寄ったコンビニで、雑誌と弁当、そしてふと目に付いたインスタント味噌汁をカゴに入れた。
「味噌汁なんて、これで充分だわ」
暗い部屋に帰り、弁当を食べているとインターホンが鳴る。
「三重子…ごめん」
夫は一度実家に戻ったものの義母に一喝され、すぐここに戻るのも気まずくて友人に泊めてもらっていたそうだ。
「この匂い、味噌汁?」
「そうだけど…あなたも飲む?」
「…お願いします」
三重子はキッチンで作ったインスタント味噌汁を、テーブルに着いて待つ夫の前に澄まし顔で置いた。
「いただきます」
夫は神妙な顔で麩の味噌汁を一口啜ったかと思うと、途端にキラキラと目を輝かせる。
「旨い!これだよ、三重子!これ、お袋の味噌汁と同じ味だ…ありがとう三重子!」
(なんだ…お義母さんも手抜きだったんじゃない…)
三重子の肩からフッと力が抜けた。
(終)
新婚生活三週間目にして、三重子の堪忍袋の緒が切れた。
夫が味噌汁を飲みたいと言うから作ったのに「お袋の味と違う」と、一口で止めてしまうからだ。
義母に味噌の種類を聞き、ダメ出しの度に濃度を変えて出したが夫は全て残した。
「もう作らない!そんなに飲みたかったら実家に帰れば?」
もちろん三重子は本気で言ったわけではない。
しかし夫は黙って立ち上がると本当にそのまま出ていってしまった。
「…何よ、マザコン!」
夫はその後、一週間も帰って来なかった。
離婚という選択肢が三重子の頭から離れず、もともと苦手だったこともあり食事の支度をするのが億劫になる。
仕事帰りに寄ったコンビニで、雑誌と弁当、そしてふと目に付いたインスタント味噌汁をカゴに入れた。
「味噌汁なんて、これで充分だわ」
暗い部屋に帰り、弁当を食べているとインターホンが鳴る。
「三重子…ごめん」
夫は一度実家に戻ったものの義母に一喝され、すぐここに戻るのも気まずくて友人に泊めてもらっていたそうだ。
「この匂い、味噌汁?」
「そうだけど…あなたも飲む?」
「…お願いします」
三重子はキッチンで作ったインスタント味噌汁を、テーブルに着いて待つ夫の前に澄まし顔で置いた。
「いただきます」
夫は神妙な顔で麩の味噌汁を一口啜ったかと思うと、途端にキラキラと目を輝かせる。
「旨い!これだよ、三重子!これ、お袋の味噌汁と同じ味だ…ありがとう三重子!」
(なんだ…お義母さんも手抜きだったんじゃない…)
三重子の肩からフッと力が抜けた。
(終)