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ひよこと野獣
第4章 ひよこ 陽菜の困惑

覚悟はしていたはずだった。
だけど現実はあまりにも厳しくて、先輩に着信が入る度に心が蝕まれる。
「陽菜!その手どうしたの!?」
あまりにも手に力を込めるから時折出血することもあり、私の左手の手のひらは自分で見ても痛々しいことになっていた。
りんちゃんが驚くのも無理はないと思う。
「家に帰ったら消毒と包帯は巻いてるんだけどね」
日に日に酷くなっていく手。
だけどりんちゃんやももちゃんには理由を知られたくない。
だって自分で決めたことだもん。
我慢するって決めたんだもん。
こんな手になってでも……私、先輩の側にいたい…
「ちょっと私トイレに行ってくる~」
ももちゃんが席を立った。
机を挟んだ向かいに座っていたりんちゃんが小声で話す。
「先輩に嫌なことされてるんじゃないの?」
「そんなことしないよ」
「本当に?」
「うん、ホントに」
そんなことするような人じゃない。
先輩は謙遜したけれど、やっぱり先輩は優しかった。
私のレベルに合わせてくれて、嫌なことなんてひとつもされたことなんてない。
「じゃあ何でこんな手になるの?お母さんと喧嘩でもした?」
「ううん、違うの。大丈夫、大丈夫だから」
にっこり笑ってそう言うと、りんちゃんは私の手を撫でながら黙ってしまった。
大丈夫。
もうすぐ夏休みだもん。
その間は一緒に帰れないから、きっと手のひらも治るはず。
夏休みまであと2週間。
あともうちょっと我慢すれば……
だけど現実はあまりにも厳しくて、先輩に着信が入る度に心が蝕まれる。
「陽菜!その手どうしたの!?」
あまりにも手に力を込めるから時折出血することもあり、私の左手の手のひらは自分で見ても痛々しいことになっていた。
りんちゃんが驚くのも無理はないと思う。
「家に帰ったら消毒と包帯は巻いてるんだけどね」
日に日に酷くなっていく手。
だけどりんちゃんやももちゃんには理由を知られたくない。
だって自分で決めたことだもん。
我慢するって決めたんだもん。
こんな手になってでも……私、先輩の側にいたい…
「ちょっと私トイレに行ってくる~」
ももちゃんが席を立った。
机を挟んだ向かいに座っていたりんちゃんが小声で話す。
「先輩に嫌なことされてるんじゃないの?」
「そんなことしないよ」
「本当に?」
「うん、ホントに」
そんなことするような人じゃない。
先輩は謙遜したけれど、やっぱり先輩は優しかった。
私のレベルに合わせてくれて、嫌なことなんてひとつもされたことなんてない。
「じゃあ何でこんな手になるの?お母さんと喧嘩でもした?」
「ううん、違うの。大丈夫、大丈夫だから」
にっこり笑ってそう言うと、りんちゃんは私の手を撫でながら黙ってしまった。
大丈夫。
もうすぐ夏休みだもん。
その間は一緒に帰れないから、きっと手のひらも治るはず。
夏休みまであと2週間。
あともうちょっと我慢すれば……

