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第5章 野獣 武志の誤算

「先輩、もうすぐ夏休みですね」

「そうだな」

「む、無理だったらいいんですけど…」

「何だ？」

「ど、どこかに遊びに行きませんか？」

遠慮がちに、でもちゃんとあれから言葉にしてくれるようになった陽菜に俺は嬉しさを感じていた。
まだ左手は痛々しいけれど、何ヵ月かしたら傷も目立たなくなるに違いない。

「そうだな。海は好きか？」

「海ですか？好きです！」

「俺の兄貴がペンションを経営してるんだ。そこに遊びに行くか」

「え！い、いいんですか？私が行っても…」

きらきらと目を輝かせて陽菜が俺を見る。
その目が姪っ子と被ってふきだした。