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冷たい月を抱く蝶
第2章 温かい手のひら
「そうか……」
「きみは随分、一人で寂しい思いをしてきたんだな…」

「なら、私のもとに来るか…?」

「つ…ひっく…」
「うっ…うっ…」

「私には妻や子供もいなければ、大切な恋人もいない。私もきみと同じく、一人ぼっちだ」

「きみが良ければ、私の娘にならないか――?」

「私が貴方の娘に…?」

「ああ、そうだとも。そしたら、きみを幸せにしてあげるよ?」

「ほ、本当に…?」

「私のこと、捨てたりしない…?」

「ああ、そんな残酷なことはしないさ。きみ見たいな可愛いらしい娘がいたら、私は毎日きみを離したりはしない」

「どうだい?」

男の人は私に優しく話しかけてくると、そのことを言った。

 私は何故か。その人が悪い人ではない気がして、素直に受け入れた。

どのみち私はこのままでは、路頭で飢えて死ぬことになる。私はそんな絶望的な未来から、逃げ出す為に彼の手を取った。
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