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冷たい月を抱く蝶
第6章 狂気への目覚め

「クレハドールお坊っちゃま、婆やをお呼びでしょうか?」
「ああ、シンシア。すまないが一つ頼みがある。瞳子にこの着物を着てやってくれないか?」
「瞳子に着物をですか…?」
「ああ、そうだ」
クレハドールがそう返事をすると、シンシアは瞳子を上から見下ろして、目を細めて尋ねた。
「この子にですか?」
「ああ、何か問題か?」
「……」
「婆やは確か、日本の着物には詳しかっただろ?」
「…ええ、着物の着付けなら私にお任せ下さい」
「では、瞳子を頼んだ」
クレハドールがそう話すと、シンシアは物言いたげな表情で黙って従った。
「わかりました。では瞳子、私と一緒に来なさい」
「ええ、わかったわ」
そう言って瞳子が素直に返事をすると、シンシアは彼女の右手を強く掴んだ。
いきなり右手を強く掴まれると、瞳子はそこで彼女の手を振り払おうとした。だが、シンシアは無言で彼女を奥の部屋に連れて行った。

